研究概要 |
本研究では,靭性の高い層間樹脂層を制御してベースとなるCF/エポキシ層(ベースラミナ)との界面領域まで拡散させ,炭素繊維の阻止によりき裂を高靭化層内にとどめ,層間強度を飛躍的に向上させることを目的とした.さらに,複合材料構造物の長期使用で重要となると考えられる,疲労,衝撃等の損傷の修理につき,層間の樹脂層のみを修復することにより,修理可能なインテリジェント材料とすることについても検討した.本研究の成果概要は次のようにまとめられる. (1)層間樹脂層とベースラミナの界面メゾ構造制御:層間の樹脂層としてアイオノマーを用いた積層板を作製した.高靭性のアイオノマーがベースラミナに侵入する形で,ベースラミナの表層に靭性の高い界面層が形成された. (2)破壊靭性:き裂は常に高靭化された界面層内を伝ぱした.これに対応して,靭性値はモードI,モードIIともベースとなるCF/エポキシ積層板と比べ著しく上昇した.また,この靭性値はき裂が進展しても低下しなかった. (3)アイオノマーフィルムの厚さ依存性:モードIについては,フィルム厚さが小さいときは,厚さの増大とともに著しくじん性値が増加するが,厚さが25μmを超えると,増加の割合が小さくなった.一方,モードIIでは,フィルム厚さの増加とともにじん性値は連続して増大し,フィルム厚さが200μmの場合は10kJ/m^2と,すでに報告されている中で最高値を与えることがわかった. (4)モードI疲労き裂伝ぱ特性:従来の層間高靭化材では,き裂が比較的早く高靭化層からそれ,き裂伝ぱ抵抗が低下するのに対し,本材料では,高い進展抵抗を維持することが明らかとなった. (5)修復性:破壊じん性試験後に分離した試験片を再溶着して,修理を試みた.その結果,そのままの修理ではじん性が低下すること,修復面にアイオノマーフィルムをはさむと,もとの層間高靭化材に匹敵する高いじん性が得られ,修復性が実証された.
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