研究概要 |
HfN薄膜に生じた極めて大きな内部(圧縮)応力(-4〜-10GPa)を種々のイオン照射により大きく緩和することができた. 1.HfNに対する種々のSi+イオン照射(450keV,500keV,1.1MeVのエネルギー)による応力緩和は極めて大きく,このことはX線回析および基盤のたわみから確認することができた. 2.金イオン照射(1,2.5,5MeVのエネルギー)による応力緩和は極めて大きいが,この範囲の実験では照射エネルギーが大きいほど応力緩和が小さくなる. 3.炭素イオン照射(100,150keVのエネルギー)によっても-4〜-5GPaの応力緩和が観測された. これらの応力緩和は,イオン照射によるサーマルスパイクによって溶質欠陥および空孔がHfN薄膜中に分散させられることおよび空孔の増加によるものであると考えられる. イオン照射前後の薄膜のミクロ組織変化をナノインデンテーション,X線回析(XDR),透過電子顕微鏡(TEM),オージェ(AES)により調べた.AES,XRD,TEMによる観察ではHfN薄膜中の成分,転位組織,集合組織などはイオン照射によっては変化しないことがわかった.ナノインデンテーション試験ではイオン照射後の資料に軟化が認められたが,これはイオン照射によりHfN薄膜直下のシリコン基板にアモルファス層が形成されたためである.ただし,このアモルファス層の形成そのものが応力緩和を引き起こすものではないことが弾塑性力学解析により明らかとなった.
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