研究概要 |
レーザラマン分光分析による応力評価法は光学フォノン振動数変化と応力の比例関係をその測定原理としている。本研究では,その測定原理である光学フォノン振動数の変化と応力の関係を,応力の多軸性も含めて理論と実験の両面から調査した。平成10年度はシリコン単結晶の(100)面を,平成11年度は(110)面を対象にラマンピークシフト量と応力状態の関係を理論と実験の両面から研究した。(110)面はもっとも力学的異方性の高い面であり,ラマン活性のある偏光配置の計算やラマンピークシフト量と応力状態の理論的関係は過去にまったく研究されていない。以下に得られた結果を示す。 (1)(100)面の後方散乱配置時のラマンシフト量は,応力の方向には依存せず,第1不変量であるσxx+σyyに比例することが,理論と実験の両面から導き出された。また,せん断応力は後方散乱配置では計測できないことが解った。 (2)(110)面の後方散乱配置時のラマンシフト量は,結晶方位と応力成分の関係および入射散乱の偏光配置に依存することが理論解析の結果から導かれ,実験結果からもその傾向が確認された。すなわち,ラマンシフト量が応力の大きさだけでなく応力の方向と測定時の偏光方向により異なることが解った。また,種々の方向に引帳負荷を加えたときのラマンシフト量と応力の比例係数を,種々の偏光配置について理論的に求めた。この結果は単にラマンスペクトルを測定することで応力の大小を判断できないことを示しており,応力評価における重要な注意事項である。 (3)(110)面では2つの固有原子振動数を適当な偏光配置を採用することがわかった。しかし,一般的な3つの応力成分を分離することはできない。
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