研究概要 |
遺伝的アルゴリズムは複雑な最適化問題に対して有効な方法である.しかしながら,その欠点は計算負荷が高いことである.そこで並列処理が不可欠となるが,並列化における分散モデルによっては並列性が十分に上らない,あるいは並列性は上るが最適解の品質を高めることが出来ない,などの問題が残っている. こうした問題を解決するために,まず遺伝的アルゴリズムにおける種々の分散化モデルを基に並列性の高い新しいモデルを構築した.次に,遺伝的アルゴリズムの解の品質が交差率や突然変異率など多くのパラメータに依存することから,分散母集団モデルにおける各集団でのパラメータを広い範囲で変化させ,最適解が自動的に最適なパラメータを探すメカニズムを考えた.その結果,次の結果が得られた. 1)母集団を分割し,一定期間間隔で移住を行うモデルは,最も並列性が良好で,かつ,解の精度も良好であった. 2)解の精度が向上した原因は母集団の分割による初期収束の回避である.サブ母集団での独自の進化が全体に良好な影響を及ぼしたことが明らかとなった. 3)遺伝的アルゴリズムの遺伝パラメータである交叉率と突然変異率に関しては,単一母集団の場合と分割母集団の場合ではそれらの最適値が異なることがわかった. 4)最適化遺伝パラメータが不明な場合に最適なモデルとして,分散環境をもつ分散遺伝的アルゴリズムを提案した.このモデルの有効性を検証し,良好な結果を得た. なお,これらの研究結果はいくつかの学会などの研究会において発表し,また一部は論文投稿を行った.
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