研究概要 |
内径1mm以下の極細ステンレス鋼管の内壁面を精密に研磨するために,スラリー高速流動法による研磨法を創案し,本研磨法について実験,理論の両面から検討を行なった.製作した研磨装置は,長尺の極細管の内壁研磨に対応でき,かつ,管の左右端に対してスラリーを往復動させることが可能な構造となっている. 管径の異なるステンレス鋼管細管(内径0.28,0.4,0.6mm)の内壁面の研磨を試み,砥粒濃度,砥粒径,細管内径,スラリー注送圧力の影響などの検討を行い,本研磨法の有効性を明らかした.素管内壁の面粗さは,パス回数(スラリーの管内通過数)の増加とともに次第に低減し,その低減の度合は数パス回数の所で大きく,その後漸減状態となって飽和する.細粒よりも粗粒の方が面粗さの低減に効果がある.粗粒による研磨において粗さが飽和した時点で,スラリーを細粒のものに交換し,継続して研磨を行うこと(二段階研磨)によって,さらに粗さを低減できる.SEM観察の結果,素管内壁面に見られるテクスチャー(微細な凹凸模様)はパス回数とともに次第に消滅していく. 研磨メカニズムに関して解析的に検討を行った.スラリーの平均流速を測定してレイノルズ数を求めた結果,管内のスラリーの流れは乱流であると考えられるので,スラリーの流速分布に乱流における1/7乗則を用い,細管内壁面の突起高さを考慮して,粗さの低減過程をシミュレーションできることを示した. 研磨後の細管に一定流量の窒素ガスを流した時の差圧(大気圧と管内を流れるガス圧力との差)を測定した.差圧に及ぼす管径の違いの影響を補正することで,壁面の粗さと差圧との間に成立する普遍的な実験式が見いだされ,仕上げの程度を差圧測定によって評価できることが分かった.
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