研究概要 |
本研究ではアルミニウム薄板加工の中でも特に厳しいとされる,角筒深絞り加工において,アルミニウム重量比が85%を越える変形能の低い複合素材の成形性を飛躍的に向上させ,これら素材をリサイクル材料として積極的に利用できる,高性能加工システムの開発を目的としている.具体的製品としては,近年需要が急激に増加している携帯電話用電池ケースの生産システムをターゲットにした.本研究で得られた成果は以下の4項目である. 1.生産工程の最後に行うしごき加工を高効率かつ高精度に行うための基礎実験として,円筒アルミニウム押出し管の超音波振動付加しごき加工実験を行い,加工荷重の低減や表面仕上げの改善などにより加工段数を大幅に減じることができた. 2.工具形状の最適化および熱処理による材質改善により,工程数を従来の8段から最高4段に減じ,目標とする電池ケースを加工できるようになった. 3.最終段の深絞り工程で使用するダイスを角筒の短辺部中央あるいは長辺部中央にあたる位置で2分割し,それらを2個の圧電アクチュエータにより半径方向に加振できる装置を開発した.振動付加により加工荷重が約20%程度低減する,板厚が均一になる等の効果は確かめられたが,加工工程数を4段以下に短縮することはできなかった. 4.これまでとは全く異なる革新的な成形方法を種々模索した結果,傾斜付ダイスによる角筒深絞り加工がこの種の容器の製造に非常に適していることを見出した.そこで,それを行うための装置の開発および加工性実験を行い,板厚1mm,短辺長7.6mm,長辺長16mmという条件に対して,高さ約20mmの角筒容器を一工程のみで成形できるようになった.
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