研究概要 |
本研究は,砥石作業面を加工目的に応じた最適な状態に維持することによって研削加工を最適化しようとするもので,(1)砥石作業面を機上測定できるシステムの構築;(2)加工目的に応じた砥石作業面の生成;(3)砥石作業面性状の定量化;(4)砥石作業面性状のインプロセス測定;という研究計画からなっている.最も使用頻度が高い超砥粒砥石およびビトリファイドアルミナ砥石を対象として行った研究成果を以下に示す. (1)砥石作業面を直接測定する'静的手法'として,触針式粗さ計(触針法)およびデジタルイメージスコープ(画像処理法)を研削盤の砥石ヘッドに装着して砥石作業面を観測するシステムを構築した.その結果,超砥粒砥石に対し,形直し・目直し直後の初期研削工程における砥粒先端の微小破壊による切れ刃の増加,切れ刃先端の摩滅摩耗,結合剤の除去によるチップポケットの増大などの過度的過程を詳細に観測することに成功し,定常研削へ移行する時期を正確に評価できた. (2)'動的手法'として,ドレス条件を段階的に変えて異なった状態の砥石(標準状態)を生成し,それらの砥石から発生する研削音や研削振動の特徴をニューラルネットワークによって学習・識別するシステムを構築した.その結果,研削抵抗や仕上面粗さに明確な差が生じる程度に相違がある場合には,砥石作業面状態は精度よく識別できることがわかった.また,標準状態以外の状態を入力した場合,ネットワークは最も近い標準状態を出力した.さらに,摩耗した砥石から研削音を入力した場合,ドレッサ送り速度が小さく砥粒先端がより平坦化した標準状態を識別結果として出力した.このことから,本手法には柔軟性があり,使用する砥石ごとにいくつかの標準状態をあらかじめ学習させることによって,インプロセスで砥石の状態を評価することができることを示した.
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