研究概要 |
FRPの結合材であるプラスチックスを,より結合力の小さいゴムに替え,切れ刃であるアルミナ繊維を無秩序に練り込んだ,FRP工具よりも更に研磨能力の小さいFRR(Fiber Reinforced Rubber)工具を製作し,焼き付け塗装された鋼板の塗装除去実験を行った.その結果,平均研磨圧力3MPa,研磨速度107m/min,送り速度100mm/min,アルミナ繊維径30μmの条件では,ほぼ塗装が除去されることが判った.また,アルミ缶の塗装除去では,平均研磨圧力1MPa,研磨速度173m/min,送り速度150mm/min以上の条件で加工すると,塗装は全て除去できた.次に,鋼板,銅板に生じた酸化第一鉄(FeO),酸化第一銅(CuO),酸化第二銅(Cu_2O)の錆を,FRR工具,FRP工具及び軸付き砥石を用いて除去実験を行ったところ,軸付き砥石は全ての錆を除去できたが,地肌の鋼板,銅板も激しく研磨した.FRP工具は酸化第一鉄(FeO),酸化第一銅(CuO)は余り除去できなかったが,酸化第二銅(Cu_2O)は除去でき,地肌も殆ど傷めなかった.FRR工具は酸化第二銅(Cu_2O)をやや除去できたものの,他の錆は除去できなかった.最後に,HS95程度に焼入れされた機械構造用炭素鋼を,板状FRP工具で加工痕を錯綜させて研磨したところ,最大高さ粗さはおよそ1μmほどになった.更に工具自体も回転させるため,工具を丸棒状に変えて,研磨したところ,アルミナ繊維径10μmのSR工具で研磨速度5000rpm,負荷荷重49Nで0.5μmの粗さが得られた.また,研磨速度が5000rpm以上であれば,負荷荷重が9.8Nと小さくても,あるいは負荷荷重が29.4Nとやや大きければ,研磨速度が440rpmと小さくても1μm程度の粗さが得られることが判った. 以上の実験結果より,FRP工具あるいはFRR工具は研磨用工具あるいは塗装や錆の除去用工具として有用であることが判った.
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