| 研究概要 |
本研究を総括すると以下のようになる.
第1段階では,歯付ベルトに使用されている撚りコードが,屈曲疲労によって内部から破損し,その内部破損によってコードの曲げ剛性が低下する力学的な機構について検討した.その結果,
(1)疲労き裂発生に伴ってファイバー軸方向のせん断応力が解放される力学モデルを用いて,撚りコードの曲げ剛性低下を説明する解析解を得ることができた.
(2)この解析結果はFEMによる数値計算結果とよく一致した.
第2段階では,撚りコードとゴムのFRR柱における引張剛性に関して,FEM解析と簡易力学モデルを用いた力学解析を行い,その評価式を求めた.得られた結果の要約を以下に示す.
(3)撚りコードとゴムのFRR柱の伸びには,ファイバー径や撚り角の他に,ファイバーピッチ円半径や荷重端面の拘束条件も影響する.
(4)FRR柱の幾何学条件,内部エラストマの体積一定条件,ファイバーの伸び,および端面回転拘束条件を考慮した引張剛性の評価式を提案した.その評価式は,FEM解析結果や実験結果とよく一致する.
(5)エラストマの体積一定の効果とコードの撚り戻りの効果は,引張剛性に大きく影響を及ぼす.
第3段障は本研究の仕上げの段階であり,歯付ベルトに使用されている撚りコードの内部破損によってコードの引張剛性が低下する力学的な機構について検討した.その結果,以下の結言を得た.
(6)疲労き裂発生に伴ってファイバーの曲げモーメントが解放される力学モデルを用いて、撚りコードの引張剛性低下を説明する力学モデルを提案できた.
(7)この解析結果はFEMによる数値計算結果と良い相関を示した.また,撚りコードの引張剛性低下に関する実験結果の傾向を説明することができた.
|
