研究概要 |
本研究では,機械運動学の立場で機構の自由度,運動機能,構造の剛性の観点から,マイクロマシンのための大変形弾性ヒンジを利用した面外への運動を可能とする三次元マイクロ運動変換機構を提案している.また,半導体微細加工技術の利点であるバッチ処理による一括大量製作を利用し,この運動変換機構を基板上に多数を高集積に製作することによる三次元高集積マイクロ運動変換機構の実現を目指している.本研究より得られた結果を要約し以下に示す. 平面内の入力運動を面外への出力運動に変換する大変形弾性ヒンジを用いた運動変換機構を提案した.また,半導体製造装置による製作を考慮したアクチュエーター体形三次元マイクロ運動変換機構を提案した. 提案した運動変換機構について,はりの大たわみ理論に基づいた理論解析式を導出し理論解析を行った.また,マクロモデルによる実験結果から理論解析手法の妥当性を確認した. 理論解析により運動変換機構の入出力変位・力特性を明らかにした.その結果,ヒンジ形状寸法と機構定数(運動変換機構の節の厚さと節の長さの比)が,それぞれ独立して変位特性を決定することと,このことにより運動変換機構の設計の自由度が大きいことを示した.また,力特性については,機構定数が支配的なパラメータであることが明かとなった. 半導体製造装置を用いた三次元マイクロ運動変換機構の製作プロセスを示し,実際に機構の製作を行った.この結果,機構中央部に位置する弾性ヒンジ部のマスクの消失,ならびにポリイミドをエッチングする際に生じる繊維状の突起物の発生を確認し,三次元マイクロ運動変換機構の製作に関して今後の課題を明かにした. ポリイミドで製作した構造に金属膜を蒸着することで静電駆動が可能な櫛歯形静電リニアアクチュエータを提案した.また,半導体製造装置を利用してアクチュエータを製作した.実験から,80Vの印加電圧で15.75μmの出力変位を確認した.
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