研究概要 |
ミクロンあるいはサブミクロンの座面滑りの繰り返しによるねじのゆるみに関する研究を行った.その対象には,ゆるみ機構,ゆるみ試験法を取り上げ,ゆるみ止め設計に関係する基礎項目についても考察した. (1)体力によって生じるボルト軸の小さなねじれトルク変化が戻り回転を発生させる主因と考えて,体力の作用から戻り回転に至る挙動を説明した. (2)自製の装置を用いて実験を行った.この実験装置にはM10またはM10×1.25のボルト,ナットで締め付けられた締結部に軸直角一方向から連続的にハンマ衝撃を与えられる.実験結果から,この条件で簡単に回転ゆるみが発生,進行することを明らかにし,ゆるみ機構の考え方が大筋で適用できることを示した. (3)数種のナットに関する実験結果により,本方式によりサンプルのゆるみ止め性能の優劣を評価できることを示した.また,本方式は,例えば非回転ゆるみと回転ゆるみを識別する等,より細かな評価を可能にする見通しが得られた. (4)ゆるみ止め設計のための基礎事項として,被締付け物接合面の滑り防止,座面陥没の防止,ボルトおよびナットの形状を挙げて,考察した.その内の最後者に関し,ボルトの座面角度を重要因子の一つとし,座面圧分布の有限要素解析結果を示した.座面圧分布に対する座面角度の影響感度は極めて高く,それがゆるみ止め対策に重要な留意点であることを述べた.
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