研究概要 |
トライボシートの開発に関連する以下の研究を実施した. 1.精密金型の製作(放電加工による付着加工) 微細形状創成放電加工機を使い,電極材料を相手表面に付着させる技術を開発し特許を取得した.この技術はトライボシート製作金型の製造に有効に活用され,研究成果の一部は{11.研究発表}に記載の論文として発表した. 2.Soft-EHL理論計算 アーチ状の微細構造エンボスを持つトライボシートは微小揺動によるせん断応力と面圧により変形し,流体潤滑には不可欠な微小くさび構造となる必要がある.シートの材質,厚み,エンボス形状,摩擦条件により所定の油膜圧力が発生することをSoft-EHL理論計算で確認した.この計算は油膜圧力を算出するレーノルズ方程式を油膜領域で解き,その油膜圧力,せん断応力をもとにエンボスの弾性変形を有限要素法で計算し,さらにその計算結果を境界条件として先のレーノルズ方程式を解く二重繰り返し計算となる.計算に必要なソフトは独自に開発し,予測に近い計算結果が得られるようになってきた.しかしながら条件によっては計算が発散することもあり,緩和係数,初期境界条件などの設定に工夫が必要なことがわかった.また計算結果を基にしてトライボシートの最適設計が可能となった.これらの結果は{11.研究発表}に記載の講演会で発表予定である. 3.トライボシートの微小揺動摩擦試験 目標とする実用条件である高面圧微小揺動での試験が可能な実験装置を試作した.初期なじみの段階で発生する摩耗粉を速やかに領域外へ排出するために摩擦面を縦型とし,面圧,接線力測定の安定化を図った,{11,研究発表}に記載の講演会で発表した前の実験装置ではスライダー試片の不安定性,試片端部の不規則接触により十分な低摩擦が得られなかったが,新たな実験装置ではこれらの問題が解決し,優れた摩擦特性を示した.試作したトライボシートでは低速度から0.01を下回る摩擦係数を示し,流体潤滑状態となっていることが確認できた.振幅2mmの微小往復動でこの様な低摩擦を示すすべり案内の利用分野は広い.この結果は{11.研究発表}に記載の講演会で発表予定である.
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