研究概要 |
本研究では,改質表面の真空・高温環境下でのトライボロジー特性に関して,通常環境下ならびに10^<-4>Paかつ1073Kまでの高温・真空中で数値解析を含めた総合的な実験・解析を行い,高機能改質表面のトライボロジー特性および性能評価をその表面損傷との関連において実施するとともに,実用化すべき表面改質設計法を提案することを目的とした.種々の高温真空用の摺動材料をとりあげ,摩擦・摩耗特性を調べた一連の実験から各材料の使用限界についての知見を得た. 転がり疲れ強さに及ぼす表面改質処理の影響を明らかにするため,表面処理ローラの転がり疲れ試験を行うとともに接触応力および表面下の応力に及ぼす表面改質層の影響を境界要素法により検討した.その結果,弾性係数の小さい表面改質層で覆われたローラの転がり疲れ強さの向上は,主として接触端部の接触圧力の低下と表面下応力の減少によるものであった. 種々の無電解Ni合金めっきを取上げ,高真空無潤滑下での二円筒試験を行い,摩擦・摩耗挙動に及ぼす還元剤ならびに分散粒子の影響を調べた.また,有限要素法を用いて計算されためっき層中のせん断応力と摩耗挙動について比較検討を行った.めっき層より弾性率が小さい材料をめっき層内に分散析出させる場合,粒子周りで最大せん断応力およびミーゼス応力が大きくなるため,めっき層の強度が低下し摩耗増大につながることを明らかにし,最適な分散粒子についての考え方を示した. フラクタル次元の摩耗表面評価への適用について,触針式表面粗さ計および非接触のレーザー顕微鏡により種々の摩耗面を計測・解析した.粗さ計では測定のできない微小な凹凸のフラクタル次元をレーザー顕微鏡のデータからは評価できることを明らかにした.フラクタル次元を用いて摩耗表面を評価する際には両者を用いることにより,より有益な情報が得られることを示した.
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