研究概要 |
本研究では,設備診断の知能化と自動化のために,遺伝的アルゴリズム,ニューラルネットワークおよび可能性理論などの情報工学理論を駆使した設備の知的診断技術に関する諸提案を行い,その基礎理論と実際の応用法について検討した。本研究成果は以下のとおりである。 故障の初期段階,または故障部位から遠く離れた距離で測定した信号はノイズに強く汚染され,以上信号成分が比較的微小である。このような信号から故障パターンの特徴を抽出することが困難である。ノイズを除去すれば,故障の識別が容易になるため,ノイズ成分をできるだけ除去し,真の故障波形を抽出することは故障の早期発見,故障原因の早期判明にとって重要である。従って,本研究では,診断のためのノイズ除去法として,「遺伝的アルゴリズム(GA)による異常信号の検出法」および「統計的変量変換法による異常信号の周波数帯域の抽出法を提案し,実例でこれらの手法の有効性を検証した。 また、コンピュータにより異常検出および異常種類の識別を自動的に行う場合は,対象の信号の特徴を示す有限個のパラメータ(「特徴パラメータ」)を計算する必要がある。是までに診断用の特徴パラメータの一般的な定義方法は報告されていないため,診断用特徴パラメータの選定は,多くの時間と労力を要するだけでなく,最適な特徴パラメータが見つかるとも限らない。従って,本研究では,設備状態を鋭敏に反映する特徴パラメータを異常信号から自動的に生成する方法として,「遺伝的アルゴリズムによる時間領域の特徴パラメータの抽出法」,「遺伝的アルゴリズムによる周波数領域の特徴パラメータの抽出法を」,および「ウェーブレットとGPによる可変運転条件における設備診断用の特徴パラメータの自動生成法」を提案し,実例でこれらの手法の有効性を検証した。 一般的には兆候パラメータが設備の状態変化に従い変化し,また設備の状態が変化しなくても何らかの外乱や負荷の変動により変化する場合がある。よって,特等パラメータの値の評価は不確定性をもつ問題の処理に帰着できる。設備診断の自動化,知能化にとって可能性理論やニューラルネットワークは非常に有望なツールである。従って,本研究では,ニューラルネットワークを実際の設備診断問題に適用するとき,それぞれの特徴,長所と短所について検討し,「多値ニューラルネットワークとラフ集合による故障診断法」を提案し,実例でこの手法の有効性を検証した。
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