研究概要 |
軸流圧縮機動翼列の翼端漏れ渦の崩壊過程における複雑な非定常三次元流れ構造を数値シミュレーションおよび実験により解析し,渦の崩壊が動翼列の内部流動に及ぼす効果を調べた.その結果,以下のような知見が得られた. 失速点近傍において,翼前縁近くでいったん巻上がった漏れ渦は,翼間内でスパイラル形の渦崩壊を起こす.その結果,縦渦としての漏れ渦構造は激変し,漏れ渦は時間とともに翼間内を大さく蛇行して隣接翼の圧力面と干渉する.その干渉過程において,漏れ渦は圧力面境界層とリンクし,圧力面上に足を持った翼面に垂直な渦構造が形成され,この渦構造は下流へ移流しながら急速に減衰する.この干渉の結果,翼端近傍の圧力面前半部で極めて大きな圧力変動が現れる.漏れ渦崩壊の発生は,漏れ渦の存在および前縁はく離の予兆を仮定したのでは説明のつかない異常流動現象を翼端流れ場に引き起こす.すなわち,動翼下流で漏れ渦が巻上がらないこと,漏れ渦に対応したケーシング面圧力分布の谷が翼間内で消滅すること,ケーシング近傍の低エネルギー流体が翼圧力面側に集積して著しく広がること,および翼端部の圧力面側に極めて大きな圧力変動が生じることは,漏れ渦の崩壊に起因した現象である.失速点近傍からさらに流量が減少すると,渦崩壊に伴う漏れ渦の変動が一層増大し,漏れ渦は翼圧力面だけでなく負圧面とも干渉して負圧面境界層の三次元はく離を引さ起こす結果,動翼列の性能が急激に低下する.このことは,前縁はく離ではなく,漏れ渦の崩壊という三次元効果に起因した失速が起こり得ることを示唆している.
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