研究概要 |
一般産業用として広く使用されている遠心送風機を対象に,その発生騒音を評価・低減化する有効な手法を提案することを指向して,3年にわたる研究期間内に以下のような実験的・理論的研究を行った. 遠心送風機発生騒音の中で特に顕著な分離成分として全体の騒音特性を支配する翼通過周波数(BPF)成分に着目し,音源と考えられる渦形室壁面上の圧力変動と遠距離場での発生騒音との間に相関解析を施すことで,双極子音源の理論に基づいて有効音源領域の調査を実施した.この結果,BPF1次成分の音源領域は舌部頂点近傍にほぼ限定できるのに対し,高次成分の音源領域はやや下流側に分かれて存在していることが明らかとなった.この特性を利用して,二種類に分けた有効音源領域に対して,積層型圧電素子を用いて壁面を直接加振する能動音源制御を実施した.この制御法は特に,BPF高次成分に対しては極めて有効であり,高次成分の音圧レベルを15dB以上も減衰させ,顕著な分離成分を広帯域成分に埋没させる程度に消音することが可能となった.しかし,BPF基本成分に対しては有効性が低回転数運転域のみに限定されるという欠点を持つことがわかった.これは,高回転数運転状態では音源となる渦形室壁面上の圧力変動レベルが十分に大きいため,圧電素子の振動加速度では不十分なためであることがわかった.そこで,提案した能動制御法と,送風機の幾何形状を変化させる受動制御法を組みあわせることで,特定周波数の騒音成分だけではなく,系全体の騒音圧レベルも低減できる新たな送風機騒音の低減化法を提案した.BPF基本成分に適用する受動制御法は,音源特性ではなく騒音の伝播特性を利用することで,騒音の伝播経路で音圧の低下を期待するものである.BPF基本成分は,音源波長によって選択される個数の翼間通路と吸込管路を伝播経路とし,吸込口で放射インピーダンスを考慮した波動モデルによって実用上十分な精度で推定することが可能である.伝播系の周波数応答が極小値を示す周波数に翼通過周波数を一致させることで,音源特性や流体性能に影響を与えることなく,BPF基本成分の音圧レベルを最大20dBも減衰させることができた. 圧電素子を用いた能動音源制御と,伝播系の特性を利用した受動騒音制御を組みあわせた本方法は,いかなる対象の騒音に対しても有効であり,新しい騒音評価法・低減化法の提案になるものである.
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