研究概要 |
本研究は,圧縮性乱流で重要な要素である衝撃波と渦の干渉現象や渦による衝撃波の生成機構などを,渦輪を用いて実験的に調べ,その生成機構を解明する目的で行われた.複雑な渦の絡み具合などを見るには3次元観測が必要であるが,その試みとして,両眼視差による奥行き感を利用したステレオシャドウグラフ可視化法を開発し,従来のシャドウグラフ法と共にこれを用いて,以下の3項の流れ場を可視化して調べた.観測された現象の大まかな様子と結果をそれぞれ示す. 1.剛体球に向かって正面から衝突して行く衝撃波と渦輪の運動 渦輪が球に接近すると,球面上に剥離渦が,また渦核と球面を結ぶ形で衝撃波が生成される.この衝撃波は時間の経過と伴に上流方向に膨張し進行していく.一方剥離渦は表面から離れて強い渦輪になり,両渦輪間に衝撃波が生成される.その後両渦輪は衝突運動と追い抜き運動を行う.これらの運動により下流方向に強い放射音が生じる. 2.衝撃波と渦輪の相互干渉現象 渦輪に正面衝突した衝撃波は渦核によって変形され,回折衝撃波および屈折衝撃波が生じる.これらは渦輪の中を通貨後1点に収束してマッハディスクを形成する.その後,これらの衝撃波は膨張,減衰して音波となるが,渦核との干渉状態は長く続く.これらの結果は,渦と衝撃波の干渉による放射音の解明への手がかりを与えている. 3.平板に沿って進行する渦輪 渦核と衝撃波の干渉については,いろんな系で得ている結果と同じであることが確認できた.平板近くの渦輪の渦核周辺では,生じた境界渦との相互作用等で渦核線のつなぎ替えや生成消滅が生じ複雑な構造を示す. ステレオシャドウグラフ法は,得られた像の復元像から生成渦輪や衝撃波等の位置関係が明確に分かり,奥行き認識には有効な可視化法であることが分かった.斜観測の場合,通常のシャドウグラフで撮れる像は鮮明さに欠けるが,ステレオ法の復元像は鮮明になる良さもある.
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