研究概要 |
固体高分子燃料電池(PEFC)は反応温度が80℃と低く,出力密度が高いため,取り扱い易く,自動車用動力源として,又電気と熱を供給する家庭またはオフィス用電・熱併結装置として注目されている。しかし実用化するには出力密度をさらに高める必要があり,そのため電極における熱の発生,ガスの流れ,反応生成物と熱負荷分布,水分の移動機構を解明することを本研究の目的とした。さらに実用上重要なメタノールを水蒸気により水素に転換するメタノール改質器を組み込んだ燃料電池システムについてその構成要素を検討し,熱効率の向上を図った。以上の結果から燃料電池の性能を評価する,反応・熱/物質移動を考慮した3次元シミュレータ,燃料電池および燃料改質装置から成るシステムの効率評価プログラム,燃料電池を動力源とする自動車の走行シミュレータを開発し電池システムの性能解析からその自動車への応用まで幅広く検討した。 (1)単セルでの試験では電池の電流密度を変化させ,供給ガス組成,流量および温度の電池性能に及ぼす影響を評価した。電池性能に及ぼす酸素濃度の影響は大きく,電極反応はカソードにおける活性化分極が支配的である。又電池性能に対する水分濃度の影響が最も大きく,電解質である高分子膜を常に湿潤状態に維持することが重要であった。 (2)カソード出口ガスを冷却することにより水分を回収し,アノード,カソード側に自動的に水を循環する,10セル積層電池を開発し、性能を評価した結果,電池への水分供給法として非常に有効であった。又システムの効率向上にも有効である。 (3)3次元シミュレーターにより,セル面の、電流密度,ガス組成、温度分布を計算 し,水素,空気の燃料電池内の流れ,冷却法の最適化を検討し,直行流より並行流のほうが温度分布,電流密度分布が均一になり,電池の冷却セルは少くとも3セルに1セル が必要である。 (4)燃料電池および燃料改質装置から成るシステムのシミュレーションプログラムを開発し,燃料改質器を含めた全体の効率を40%以上にする条件を明らかにした。
|