研究概要 |
火花点火機関でのエンドガスの自着火やディーゼル機関での燃料油の着火など,内燃機関のシリンダ内で発生する自着火の着火まえ反応は低温度炎に支配され,まず冷炎が,引き続いて青炎が発生する.青炎が一旦発生すると,特殊な場合を除いて熱炎発生を回避できない.青炎反応は熱炎発生のために必要な燃料分解を最終的に整える段階である.アルキル鉛添加が着火抑制効果を発揮しているのは青炎反応に対してである.自着火現象の抑制,促進という,着火制御を実現するためには,青炎反応の理解が欠かせない. 熱炎を一酸化炭素爆発であると捉え,急速圧縮機を用いて負の温度係数域で発生するピストン圧縮低温度自着火の着火誘導期で,一酸化炭素とそれの原料であるホルムアルデヒドの生成と消費の挙動を調べた.着火誘導期では一酸化炭素濃度は二酸化炭素濃度よりも高いまま増加し,当量比に関係なく熱炎直前でその温度が7000ppm付近になって,それが青炎最後期での一酸化炭素濃度は着火誘導期を決定する指標になった. 着火のトリガとなる指標として一酸化炭素濃度に閾値があることがあきらかになったが,それの一段まえはホルムアルデヒドの生成と消費であるから,ホルムアルデヒドが着火制御の鍵である.ホルムアルデヒド生成装置を試作し,冷炎の発生がないメタンを燃料とした予混合圧縮自着火運転で混合気にホルムアルデヒドを添加し,自着火の時期を制御しうることを確認した. また別途,衝撃波管で低温域を含む予混合気の圧縮着火を生じさせた.温度低下とともに管端での着火から,いくらか上流側での着火に移行するという特異な現象が現れ,そこでの着火は接触面との干渉による希薄波の発生が起点となっていることが知られた.着火促進の手法としてこの希薄波の効果が使えることを示した.
|