研究概要 |
近年,火花点火機関における低負荷時の熱効率を飛躍的に向上させる一方法として,シリンダ内に燃料を直接噴射する方式が実用化された.点火栓付近に燃焼し易い混合気が存在し,周囲は希薄な混合気状態になっていると推測されるが,燃焼については未知の部分が多く,層状濃度場中を濃度勾配方向へ伝播する火炎について研究された例はほとんどない.そこで,このような燃焼状態を初期乱れのない場において基礎的に調べることを目的とする.実験には直径25mm,長さ200mmの円筒容器を用いた.プロパンを容器の下部からゆっくりと一定量だけ噴射すると時間経過とともに軸方向に燃料濃度勾配が生じる.まず,燃料濃度状態を把握するために非燃焼状態においてレーザ誘起蛍光法により濃度分布測定を行った.次に,容器の下部で点火し,火炎を伝播させ,燃焼状態を燃焼室内圧力から解析して,初期燃焼,主燃焼期間に及ぼす点火栓近傍における燃料濃度および全体の濃度分布の影響について調査した.さらに,高速度シュリーレン撮影によって,伝播途中の火炎の状態を明確にした.均一混合気の場合には伝播途中でチューリップ火炎になる傾向が強いが,層状濃度場でにおいてはその傾向は比較的弱いことがわかった.また,層状濃度場において伝播途中で火炎が消炎する様子を捉えるとともに,CH,OH,C2など火炎からのラジカルの発光も同時に測定することにより消炎時期を明確にした.今後,消炎時における火炎の変化の様子の詳細な観察とルイス数,拡散係数の関係などの解析を行う予定である.
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