研究概要 |
近年、化石燃料の燃焼によって排出されるCO_2による地球の温暖化が大きな問題となっている。石油系燃料の埋蔵量は有限であり、将来系の燃料としては、CO_2の排出が少なく、かつ枯渇しない燃料が望まれる。植物系バイオ燃料は、一種の太陽エネルギーの利用であることから再生産が可能であり、非枯渇燃料と言える。石油系燃料に代わり、バイオ系燃料が将来の低公害燃料として利用可能かを明らかにするためには、その性能ならびに排気特性が大きな問題となる。 本研究においては、バイオ系燃料が将来の低公害燃料として使用可能な燃料となりうるかを明らかにするために、植物油をメタノールでモノエステル化した燃料を用い、これらの燃料を熱効率の高いディーゼル機関に用いた場合のエンジン性能ならびに排気特性を調べ、生成される有害成分の特定ならびにその生成機構を明らかにすることを目的としたものである。 研究結果から,食用廃油をエステル化して自動車用ディーゼルエンジンの燃料として利用することは、十分に可能と言える。回収される廃食用油の構成成分およびエステル化率の差異は,そのままメチルエステル燃料の構成成分の差となって表れるものの,これらの差異は,エンジン性能ならびに排気特性に対して重大な影響を与えることはない。しかし,特定有害物質に指定されているメタノールやホルムアルデヒド,あるいはアクロレインの排出には,特にメチルエステル燃料を構成する脂肪酸の二重結合の数が影響する。メチルエステル燃料では,軽油に比較して,燃焼室形式の如何に拘わらず特定有害物質に指定されているメタノールならびにホルムアルデヒド,アクロレイン,およびベンゼンの排出量が1.2〜3.0倍程度増加する。また,直接噴射式機関では,低・中負荷域まで微粒子の排出量が大幅に増加するが,その大部分はSOF成分である。しかし,副室式機関における微粒子の排出量は,軽油に比較して大きな差異は認められない。なお,プロピオンアルデヒドが原因となって天ぷら臭が発生することも何らかの対策が必要であろう。
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