研究概要 |
空隙を調節することにより磁気力を制御する方式を用いて,クリーンルーム内などで用いられる自走式の非接触搬送装置を開発することを目的として研究を行った.永久磁石を用いてその運動を制御し,強磁性体の天井とのギャップを調節することにより,吸引力を変化させる.また,搬送を目的とするために,浮上のための必要な要素であるアクチュエータ,永久磁石,センサは,浮上体側に配置する.浮上体は天井に非接触でぶら下り,自走する能力を持つ. まず,アクチュエータにピエゾ素子を用いて1自由度浮上実験装置を試作した.センサは渦電流式の非接触変位計を用い,浮上体の揺れによるノイズを除去するために,永久磁石の両側に2つ配置した.このセンサとアクチュエータを浮上体側に配置し,コントローラとしてDSPを用いたディジタル制御により,浮上実験を行った.浮上のためのフィードバックゲインは,浮上体の種々の諸定数からその安定範囲を求め,そのゲインを用いてPD制御により浮上を行った.その結果,一自由度の浮上に成功した. つぎに3自由度の浮上機構を試作した.浮上体は,円盤上に3つの永久磁石付きアクチュエータと3つの変位センサを正三角形になるように配置した.浮上ためのフィードパックゲインは1自由度装置のときの浮上制御を参考に,安定性の高かったPD制御方式を選び浮上実験を行った.この結果浮上には成功したが,3自由度浮上装置はロバスト性が不足していることがわかった.この理由は,浮上のためのアクチュエータの可動範囲が0.5mmと非常に小さいためであると考えられる.この対策として,安定範囲を広くとれるように,浮上状態で常にアクチュエータの動作範囲がその中心になるように制御を行った.この結果外乱に対するロバスト性が向上したが,その違いは顕著ではなく,現在制御方式を検討している.
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