研究概要 |
宇宙時代を迎え,従来以上に宇宙ロボットにかけられる期待には大きなものがある.ところで,マニピュレータを有する宇宙ロボットが活動する状況を考えると,本体が大きく重いロボットであれば,その特性は地上用のロボットとさほど変わるところはないが,そうでない場合,マニピュレータの運動に伴いロボット本体の姿勢・位置が大きく変化し,宇宙ロボットに固有の特性が現れる.この特性を補う手法として,大きなロボットを用いる方法と小型の宇宙ロボットを複数台使用する方法が考えられる.前者は,打ち上げロケットの制限から実現が難しいのに反して,後者は実用的である.しかし,この場合,ロボットの台数によりシステム方程式が変化するため,状況は非常に複雑になる.本研究では, (1)ロボットの台数に依存しない制御アルゴリズムを確立する. (2)ロボットの台数により,演算時間が大きく変化しないアルゴリズムを構築する. という基本概念の下で,浮遊型宇宙ロボットマニピュレータの自律分散制御に関する研究を行った.本研究で行った具体的なサブテーマは,以下のとおりである. (1)複数台の宇宙ロボットによる協調制御 (2)転置一般化ヤコビ行列を用いた宇宙ロボットの制御 (3)水中ロボットの制御 (4)ロボットの制御に関する研究 サブテーマ(1)は本研究の中心的な研究で,サブテーマ(2)は,宇宙マニピュレータの特異姿勢を回避し,演算時間を短縮する方法である.サブテーマ(3)は宇宙ロボットの制御の研究で培った知識を,より困難な水中ロボットの制御に展開しようとするものであり,サブテーマ(4)は,より高度なマニピュレータの制御を実現するための基礎研究である.本研究のほとんどは,理論展開に加え,模擬実験を伴う研究であり,ここで得られた結果は,今後の宇宙ロボットの開発に貴重なデータを与えるものである. これらの基礎的成果を統合し,ロボット・マニピュレータの作業能力をいっそう高める研究を今後計画したいと考えている.
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