研究概要 |
平成10年度では,碍子内に電極板対とサーチコイルを埋め込み,配電線の電圧波形並びに電流波形を非接触で計測する「碍子内蔵型電圧・電流センサ」を提案し,有限要素法に基づく数値電磁界解析を展開した。その結果,本センサには,構成が単純になる半面,電極の寸法・配置・構成,サーチコイルの配置に応じて,検出波形に位相ずれが生ずることが理論的に解明された。センサ出力の位相ずれは,高力率時,低力率時に拘らず,有効・無効電力の評価に大きな影響を及ぼすため,本センサの位相ずれ現象の原因究明,対策法は,本センサの実用化の適否に極めて重要である。また,この位相ずれは,各センサの配置,形状のみならず,配電線の配置,落雷防止のために設けられている架空地線の位置等にも大きく依存することも理論的に判明した。 平成11年度では,横引き一般配電系において,上記のセンサに採用していた単一の電流サーチコイルに生ずる電流波形の位相ずれを改善する目的で,その電流サーチコイルを等分割し,起磁力が互いに逆向きになるように直列接続し,碍子中心軸と対称位置に配置する分割配置型サーチコイル方式を考案し,三相横引き配電系並びに縦引き配電系に設置した場合を想定した有限要素法に基づく電磁界シミュレーションを実施した。また,縦引き配電系においては,電圧センサの配置を再検討し,上記シミュレーションを行った。 更に,平成11年度では,以上の知見を基に,既成の電流センサ内臓碍子に,平板電極対からなる電圧センサをシリコン樹脂で絶縁,固定した構成として碍子内に設置させる方式を考案し,更に,熊本市にある光洋電器工業株式会社(配電碍子の専門メーカ)に本センサの試作品を依頼した。また,同メーカの協力を得て模擬配電線に装着してフィールド試験を実施した結果,電流位相ずれ補償の効果を得る可能性が実験で証明でき,実用化に目処が付いた。
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