研究概要 |
昨年度の研究で,キャパシタ電圧の差を利用して,交流入力電圧から直流低電圧を直接取出すコイルレスの新しい電圧変換回路を試作し,商用電源100V/60Hzから50Vの直流電圧を80%以上の高い電力交換効率で得ることができた。更に,位相制御を用いることにより,入力電圧が55V〜120Vと大きく変化しても,80%以上の高い電力変換効率で出力電圧を安定化することができた。但し,クロックを入力電圧に同期して発生していたため,クロック周波数が極端に低下し,出力電圧リプルが大きくなるということが分かった。しかし,出力側クロックを交流入力電圧に同期しなくても問題なく動作する等の見通しが付いた。 本年度は出力側クロックを入力電圧と同期せずに100kHzで動作させ,出力電圧リプルを減少させる新しい方式を採用した。更に,出力電圧リプルを減少させるため電荷転送用キャパシタも5個に増やし,実験によりその諸特性を明らかにした。電荷転送用キャパシタが増加したのでクロック発生回路も,アナログ回路で設計すると回路が非常に煩雑となり,雑音等により誤動作を引き起こしやすいということで,今回はパソコンを用いたタイミングパルス発生器(Time98)を使用した。試作回路の結果,商用電源100V/60Hzから20V/0.5Aの直流電圧に変換でき,最大89.5%の高い電力変換効率が得られた。また,入力電圧の実効値を20Vから120Vの広範囲で変化しても安定した出力電圧を得ることができた。 今後,パソコンを用いてクロック信号を発生していた部分をEPGA等でハードウェア化し,実験および回路シミュレーションによって,電源投入時や交流入力電圧の瞬停および負荷急変時の過渡応答などについて,、明らかにしていく予定である。
|