研究概要 |
集積回路におけるCu配線は,フィールド酸化膜であるSiO_2に反応・拡散を防止するバリヤ層を設けて配線を埋め込むダマシン法による形成がなされる。Cu配線には,(1)エレクトロマイグレーション耐性向上のためCu(111)面優先配向が必要。(2)バリヤ層は機能を低下させずに可能な限り薄いこと。が要求されている。本研究ではこの要求を満足するバリヤ材料の検討を行った。Cu(111)面優先配向については,SiO_2上にNbやVなどのbcc遷移金属(110)面をバリヤとして用い,Cu(111)面の優先配向を得ることが可能であった。しかし,これらの系は熱処理によりNbやVとSiO_2との界面で,酸化・還元反応が進行する,Cu層を通ってNbやVが表面に析出する,等の問題点が指摘された。一方,この問題を解決し極薄バリヤ形成要件を調べるためにNbN,VNバリヤを検討し,Cu(111)面優先配向には劣るが,10nm厚さで優れたバリヤ特性をもつ極薄バリヤを得ることができ,これは,バリヤが熱化学的に安定な自由エネルギーをもつことが要件であると考えられた。この結果を踏まえて上述の(1),(2)の要求を満たすため,bcc構造で完全固溶となるTa-W合金の適用を検討した。Ta-W合金はbcc構造の固溶体となり,合金としての熱化学的安定性をもち,その上にCu(111)面を得ることが出来た。合金組成Ta_<0.5>W_<0.5>のバリヤを用いて得られたCu/Ta-W/SiO_2/Siモデル系では,800℃の熱処理においても,先に,NbやVバリヤで見られたSiO_2との界面での酸化・還元反応の進行や,表面への析出と言った現象は十分に抑制されており,Ta-Wバリヤを20nmと薄層化した系においても,750℃の熱処理でも有効なバリヤとなることが実証できた。本研究では,SiO_2上にCu(111)面に優位配向した配線層を形成するためのバリヤとして構造的にも,熱的安定性にも優れ,なおかつ薄層化にも対応可能なバリヤ材料の開発に目途を付けることが出来た。
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