研究概要 |
撥水性を有する高分子がいしのフラッシュオーバ機構解明を解明するため,高分子がいしの外被材料として使用されているシリコーンゴムを用い,交流電圧を印加して以下の実験・検討を行った. 1.板状シリコーンゴム上の水滴の挙動観察,ならびに水滴を介したフラッシュオーバ現象の調査. 2.湿潤時における板状シリコーンゴムの表面状態と部分放電特性との関係把握. 3.汚損湿潤時における棒状シリコーンゴム表面の部分放電特性の測定,および試料の化学分析. 本研究で得られた成果をいかに示す. 1.シリコーンゴム上の水滴は,印加電圧がある値を超えると60Hzで振動し始めた.電圧を上昇させると,水滴は電界方向に引き伸ばされ、やがて水滴を介したフラッシュオーバに至った. 2.水滴の合計体積が大きいほど,水滴の個数が多いほど,振動開始電圧・フラッシュオーバ電圧は低くなった.高電圧電極付近にある水滴がフラッシュオーバ電圧低下への寄与が大きかった. 3.印加電圧周波数が60Hzの場合、体積18μlの水滴が共振を起こし振動が激しくなった。共振が生じた場合には鉛面電気絶縁性能に影響を与える可能性が示唆された。 4.シリコーンゴム表面を人工的に荒らした試料では放電が発生しやすく,表面状態が鉛面電気絶縁性能に影響を及ぼすことがわかった.撥水性の低下が原因と考えられる。 5.霧に塩水を用いた場合には,水道水の場合に比べて放電は発生しにくくなった.塩水は導電率が高く,シリコーンゴム上の水滴近傍の電界が緩和されるためと考えられる. 6.化学分析の結果,今回の試料条件下におけるシリコーンゴムの劣化の程度は小さいことが判明した. 7.放電特性に及ぼす種々の要因の影響を実験的に評価した結果,塩霧流入量0.60l/h,塩水導電率800μS/cm,塩面電位傾度60V/mm程度が劣化加速試験に適していると考えられる.
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