研究概要 |
セルラシステムにおいては,多くのセルが固定的に配置され,セルによってサービスエリアが被覆される.セルの中心には基地局があり,セル内の移動局は常に基地局を介して通信を行なう.現存する多くのモバイル通信システムはセルラシステムを採用している.セルが固定的に配置されるため,セルラ移動通信システムのネットワーク構造は基本的には変化しない.一方で,移動局のみならず基地局が移動することができ,移動局が中継機能を有すれば,従来のセルラシステムとは異なる情報通信形態を実現できる.つまり,ネットワーク構造を積極的に変化させることができるモバイル情報通信システムである.このようなシステムにおいては,基地局の移動による柔軟なサービスエリアの被覆,移動局による通信の中継等によりセルラシステムよりも柔軟な通信形態が可能となると考えられる. 本研究では,ネットワーク構造がダイナミックに変化するモバイル情報通信システムを実現するための基礎研究を行うことを目的とし,(1)ネットワークアーキテクチャ,(2)ネットワーク制御手法,(3)ネットワーク構造の解析,の3つについて基礎研究を行なった.ネットワークアーキテクチャに関しては,移動局による中継機能を実現するための機構を提案した.ネットワーク制御手法としてルーチング,回線のスケジューリングに関する基礎的な検討を行ない,いくつかの成果を得た.また,クラスタリングを用いた場合のネットワーク構造を解析し,代表的な二つのクラスタリングアルゴリズムを用いた場合のネットワーク構造の詳細な比較を行ない,これらのアルゴリズムの違いを明らかにした. 本研究で得られた研究成果は,ネットワーク構造がダイナミックに変化するモバイル情報通信システムを実現するための基礎技術となる.また,この研究を通してネットワーク構造がダイナミックに変化するモバイル情報通信システムの実際のサービス形態の検討,アプリケーションの開発等が今後の課題であることが明らかになった.
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