研究概要 |
最近の電子通信デバイスの著しい高集積化に伴う小型化と高周波化はデバイスの設計にとって複雑な電磁界をもたらし,筺体や外部配線系を3次元的に扱う解析が必要不可欠となりつつある.このような状況の下,有限差分時間領域法(FDTD法)に代表される時間領域法が脚光を浴びている.この手法は,マックスウェルの方程式を初期条件,環境条件の基に発展問題として解く手法である.行列計算がないために非常に高速なのが特徴である.しかし,FDTD法は空間領域の離散化に差分法を用いているために格子構造の解析のみに限られていた.そのため,格子構造で曲面を近似するには階段近似しかなく精度が低下する.そこで,任意形状のデバイスの解析のために,有限要素法などに用いられている四面体要素を用いた離散化法を提案し,以下の結果が得られた. 1.FDTD法で一般的に用いられているPML境界が非格子セルにも拡張でき,良好な吸収特性を示すことが明らかになった. 2.前処理にそれなりの時間と計算機容量を必要とするが,時間領域の計算においてはFDTD法とほぼ同様な高速性が得られ,実用に耐えうる手法であることが明らかになった. 3.基本的なFDTD法では平面波の伝搬方向による伝搬定数の分散性が強く現れるが,三角性セルや六角性セルでは分散性が抑制されることが明らかになった. 4.将来,本手法が高次化されることを考えて,四面体セルや三角柱セルのための任意次数の形状関数を簡便に構成する方法を明らかにした.
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