研究概要 |
2ヵ年に亙って基盤的研究を実施した結果、音響波プローブを用いる計測法は、数万m^2の大規模空間〜数十m^2の生活空問〜数十cm^2の温熱環境モニタリングに適していることが分った。本研究は、ダイオキシン防止等の環境問題にも貢献できるものである。得られた成果の概要は次の通りである。 (1)音響波プローブによる空間測定と誤差解析,1-2)の研究発表参照 D-A,A-Dコンバータを介してPCに接続された音響トランスデューサを対向させ、この間の音響波の伝搬時間を計測する音響波プローブを構成した。測定精度は4マイクロ秒であった。数m以下の短い測定基線長であっても0.5℃以下の精度の平均温度測定が可能であった。測定に要する時間は瞬時であり、熱電対など従来の測温素子に比べて2〜3桁ほど高速であった。このプローブを複数組合わせると次の空間温度分布測定が可能となる。 (2)矩形空間における温度分布測定,3)の研究発表参照 日常空間の温度分布測定を目的として、12個のトランスデューサを壁面に取り付けた約25m^2の空間の温度分布を実測した。空間分解能は3×3であるが、対流や放射を考えると十分である。熱電対による測定結果と対応した結果が得られた。熱電対などによって測定する場合と違って、音響波を用いると空間の自由と美観を確保することが可能であった。 (3)円形空間における温度分布測定,4)の研究発表参照 大型競技場等から各種プラントにおけるパイプ内に至るまでの空間内部の非接触計測を目的として、電子的回転走査を伴う計算機トモグラフィ(CT)法を利用した温度測定を実現した。具体的には、直径約3mの円形空間の温度分布を円周上に配置した。32個の音響トランスデューサを使用して実施した実験結果は、シミュレーション結果とよく一致した。 (4)遅延線発振器型超音波温度計,5)の研究発表参照 狭隘な空間の温度をリアルタイムで高感度に実測するための遅延線発振器型超音波温度計を製作した。更に複数の発振器を組合わせることで、発振モードが不連続になる欠点を補い、温度測定範囲の拡大を図ることができた。また、熱電対での測定結果と比較した結果、十分な精度と感度が得られた。
|