研究概要 |
従来の安定論をベースにして構築されている適応制御や非線形制御に対して、最適制御の観点からそれらの制御過程を再定式化することで、安定性の確保だけでなく様々な制御性能を規定することが可能な、非線形ロバスト最適適応制御系や非線形ロバストH∞(最適)適応制御系の設計理論の構築を目的とした。またスケジューリングの観点から制御過程を見直して、新しい適応型のゲインスケジューリング制御系を最適性やH∞規範の観点から構成することも目標とした。それらに関しては以下のような成果が得られた。 1.相対次数や次数に不確定なシステムに対する適応制御系の設計理論を構築した。3次の範囲の不確定な相対次数、未知の次数、および未知の高調波利得の符号に対して、適応安定化制御系、モデル規範形適応制御系、適応サーボ系を構成する手法を求めた。関連文献は1),3),5),7),8),15),17)。 2.ハイゲインオブザーバを用いた適応制御系の簡略化構成法の開発とそのロバスト性の解析を行った。また未知の次数に対して1個の調整パラメータで適応制御系を構成する手法も求めた。関連文献は6),12)。 3.適応制御またはH∞制御の観点から適応制御系を再設計する手法について研究を行った。モデル規範形制御も含む一般的な適応制御問題に関して、2次の評価関数やH∞制御規範の観点から3つのタイプの最適適応制御系を構成する手法を求めた。関連文献は2),9),10),11),21)。 4.3の研究を進めて、未知のシステムパラメータを外乱と見なして非線形適応H∞制御系を構成する手法を開発した。それによりパラメータの時間変動に対してロバストな非線形適応制御系を、H∞制御規範の観点から実現した。さらにその手法をロボットマニピュレータ軌道追従制御に適用した。関連文献は13),14),16),18),20),24)。 5.4の手法を拡張して、非線形パラメトリックモデルに対する適応制御系を、H∞制御規範の観点から設計した。3層のニューラルネットワークを非線形パラメトリックモデルの例として取り上げ、非線形関数の近似器としてニューラルネットを用いた時の非線形適応制御に含まれる様々な不確定要因を外乱と見なして、非線形適応H∞制御系を構築した。関連文献は22)。 6.ゲインスケジューリング制御の、スケジューリングパラメータの適応的な調整法の研究を行った。LPVシステムに対して、LMIに基づく適応型のゲインスケジューリングH∞制御系を構成する手法を開発した。関連文献は2),3)。 7.双線形系の制御問題も考察した。双線形系に対するオブザーバを用いた安定化制御問題を考え、あわせて双線形の制御理論を大型車両のセミアクティブサスペンション(双線形系と見なせる)の制御問題にも応用し、それらの有効性をシミュレーションや実際の車両を使った実験で確認した。関連文献は4),19)。
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