研究概要 |
研究計画に沿って得られた成果を要約すると次のようになる. 1.三次元弾性多重散乱解析法の開発:数個のクラックに対して多重散乱効果を含んだ境界積分方程式系を定式化し,これをボルン級数型解法に変換し,多重散乱の影響を観察しながらクラックの開口変位を決定する方法を開発した. 2.弾性散乱断面積の高速計算式の導出:散乱波の積分表現に遠方近似を導入することにより,弾性散乱断面積を散乱振幅の単位球面上の積分として計算する具体的表現式を導出した. 3.複数クラックによる弾性散乱断面積の計算:入射波の進行方向に沿ってクラックが分布している場合,多重散乱効果は一般に大きいが,クラック間の距離がクラックの直径の2倍以上になると多重散乱効果はかなり小さくなることがわかった. 4.部材内損傷,弾性散乱断面積及び散乱減衰間の関係式に関する検討:多重散乱の影響が小さい場合について,単位体積中の平均クラック個数,弾性散乱断面積および散乱減衰の関係式を示した.この関係式へのクラック間の多重散乱の影響度について検討し,上記3.の結果がこの関係式に対しても成立していることを確かめた. 5.散乱減衰量の計測:分布クラックを有する供試体を作成して散乱減衰量を計測した.無欠陥供試体による参照波を利用して前処理を行った後の計測による散乱減衰量は解析による散乱減衰量と良く一致した. 6.散乱減衰を利用した損傷度評価法の提案:上記の結果5.を基に,解析により弾性散乱断面積を計算しておき,散乱減衰量を計測して4.で求めたクラックの平均個数との関係式を利用することにより損傷量を推定する一手法を提案した.
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