研究概要 |
鋼構造物の終局挙動や変形能力を正しく評価するためには部材の延性および脆性破壊の特性を把握する必要がある.しかし現在のところ構造用鋼材の延性破壊特性に関する定量的な研究は多くなく,設計上有益な数値解析による検討にまでは至っていない.一般に延性破壊は材質,形状,などに影響されるが,これらは適切な応力ひずみ関係を用いれば数値解析でも精度良く予測できるものである.平成10年度の研究結果により鋼材の大変形時の挙動はグルソンモデルを用いれば軟化を含めてかなり精度良く推定できること,およびグルソンモデルの適切なパラメータの推定法を示した.平成11年度の成果はこれをもとにした次の2つにまとめることができる.ひとつは延性破壊の発生点についての推定についてである.グルソンモデルのパラメータ推定に用いものと同じ供試体を用い,グルソンモデルに含まれる空隙体積比率を破壊パラメータとして用いた.その結果,単調載荷での破壊モードがほぼ同等と推定できるものに対しては空隙体積比率を用いてほぼ破壊点が推定できるのではないかという結論に達した.平面ひずみ状態が卓越した場合など幾何学的非線形性に起因する材料不安定が生じるような場合にはこれはあてはまらず,一般的な載荷,変形状態に対して単純な破壊基準をあてはめることは困難である.もうひとつは,このように材料の延性的な破壊を解析するのに有効と思われるグルソンモデルの繰り返し載荷経路への拡張である.これについては通常の単調載荷経路の式との整合性をとりながら,いくつかの無理のない仮定を導入し,いわゆる移動硬化型のモデルに拡張した.そして汎用有限要素法コードのひとつであるDIANAのプラグインサブルーチンにコード化した.
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