研究概要 |
本研究は,遠方からの簡易的岩盤監視法として,写真画像解析と光波測距による手法の構築とこれらを現場に応用した結果をとりまとめたものである。道路近傍の自然の岩盤斜面はその対象箇所が非常に多ため,1)分解能はmm単位であるが,遠方からある領域を長期間監視する,2)数多くの観測を実施した箇所のうち変状の兆候の認められる箇所について,より高分解能(例えば1/100mm程度)の変位計などを設置して改めて監視を行う,という2段階を経るのが合理的であろう。本研究は上記の1)を目指したものである。 ある国道のトンネル坑口から約200m上方,観測点から斜距離で約430m離れた岩盤斜面(高さ15m,幅20m,平均斜度63゜)にフールドを設置した。この斜面は非常にゆるんだ流紋岩質凝灰岩よりなり,中央部に対策工としてロックボルト,全体にロックネットとモルタル吹き付け処理が行われた。この岩盤中央に,45枚の標識板(100×100mm)と全体に光波測距用反射プリズム19個を設置した。この斜面を前述のように430m離れた定点より3カ年間,望遠写真撮影(最終的に焦点距離4500mm)と光波測距を行い,それぞれ解析を行って比較した。構築した写真画像システムの分解能は約3mm,2次元鉛直面内の変位測定の精度は約3mmであった。焦点距離4500mmの1年間の画像解析の結果,対象岩盤は冬季〜春季にかけて数mm全体にゆるむこと,2)夏季〜冬季にかけて同程度収縮するという結果が得られた。一方,光波測距においては,対象距離と測角精度の観点から,変位評価法として斜距離差による方法を提案,データー整理を行った。この方法によって,光波測距の結果は,3)冬季から春季にかけて岩盤は谷側方向へ数mm変位し,夏季から冬季に山側に戻るという可逆的変化を,3か年間繰り返している,と言う結果が得られた。この3)の結果は上記1)と2)の結果と調和的でありこの種の遠方監視としてある程度有効であることが確かめられた。
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