研究概要 |
日本海沿岸の砂浜海岸の侵食問題は深刻である。これは冬季季節風により日本海で生じる波浪が波形勾配のきつい侵食性波浪であるためである。波浪により生じる流れを海浜流というが,砕波帯内の海浜流は海底では沖向きとなり,これを戻り流れと呼ぶ。戻り流れにより砂浜海岸の底質(砂)は沖方向に輸送されるが,砕波点近傍で沿岸砂洲を形成する形でそれより沖への流出が食い止められる。このメカニズムが維持されている海岸では急速な海岸侵食は発生しないが,沿岸砂洲の形成が,護岸による反射波の発生や港湾の防波堤による沿岸漂砂の阻止などの人為的な要因により破壊されると,海岸侵食の問題が顕著になる。この様な理由により侵食された砂浜海岸を再生させる最も有力な方法として海岸のソフトビーチ化がある。現在わが国で行われている安定海浜工法はそのひとつである。本研究では,日本海沿岸のソフトビーチの変形予測をおこなうため,以下のような研究を行った。(1)海浜変形が生じる限界水深(depth of closure)の特定:大潟海岸において広域海浜流の観測を2年間行い,水深20m〜30mまでは強風による吹送流で底質が移動していることを明らかにした。(2)柿崎漁港の建設に伴って形成された安定海浜の形状を分析し,日本海においても安定なポケットビーチが形成されることを確かめた。(3)日欧米での養浜工の海岸保全への適用の仕方を分類し,その望ましい適用方法を総括した。
|