研究概要 |
マイクロバブル発生装置による貯水池水質の変化をみるために現地観測を実施した.過去4年間の水温,電気伝導度,溶存酸素の季節変化と本年度の観測値との比較から,曝気装置より上層での鉛直混合が促進され水質が一様化していることが明らかになった.主な水質的特徴として盛夏期に観測される表層過飽和層の消失,底層の電気伝導度の減少と逆転水温層・貧酸素層の消失が上げられる.予想以上に曝気装置の擾乱効果が大きかったために,成層構造を崩すことなく深層曝気をすることはできなかったが,熱塩成層の解消という意味で所定の水質浄化効果を確認した.一方,底泥からの溶出にともなう無塩プルームに関して,昨年度の研究をさらに進展させて,一定の底面濃度の条件のもとに実験と理論解析を実施した.本年度は流速計測に粒子追跡法を用いて計測精度が向上した.その結果,塩分溶出にともなう輸送力が底泥濃度の関数として表示され,貯水池の溶出フラックスの算定に適用された.熱塩循環が発生する6月〜11月の底層水温,電気伝導度の変化を予測した結果,本理論により熱塩輸送現象を定量的に再現できることを検証した.本研究の知見をもとにすれば,熱塩循環を考慮した水質予測モデルを開発することが可能である.一方,濃度・流速の画像計測法を開発するために基礎実験を実施し,有機汚濁の進んだ貯水池に生ずる微弱な熱塩循環流と濁度に対する計測手法の実用化が可能となった.実証的検討を中心に,熱塩循環現象が閉鎖水域の水質構成に重要な役割を果たしていることが確認され,この現象を考慮した新たな水質評価法の開発が必要であることが示された.さらに,マイクロバブルが水質浄化に有効であることを検証したので,今後システムの実用化を図るために浄化実験を継続する予定である.本研究成果は別途報告書としてとりまとめ,さらに学術論文や講演として順次発表する.
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