研究概要 |
備讃瀬戸と播磨灘の遷移海域に測線を設けその水塊構造を観測した。湾の成層は潮汐と日射の位相差で変化しつつ陸水起源の低塩水が受熱して湾外に熱と淡水の浮力を排出する対流循環で維持されており水塊形成のモデルとなっている。夏の水塊は過安定熱塩成層の潮汐フロント、冬は熱塩河口フロントが沿岸に出現する。この季節変化とは無関係に陸棚の浅海底高濁層が変動しながらも定在し、底層・表層濃度比は通常10以下である。この高濁層が海域を東西に行き来する潮流に応答することをADP潮流観測で明らかにした。潮流最強時は表層50-60cm/sの対数則、加減速を伴い濃度成層が伴うと40-50cm/sの対数+直線則が成立する。他に後流の排除厚が増すと80-90cm/sの直線+対数分布も現れる。粗面の対数則から懸濁物の質をみると摩擦速度1.5〜2cm/s,相当粗度0.09〜3.3cm、土砂換算粒径は20〜50μmとなり、高濁層が潮流によると確認された。夏の深水層の酸素飽和度は40%以下、11月に80%、12月は飽和する。これに対応して生物群集は岸から沖に拡大し高濁層外縁部を占める。これより濁りの相当部分は生物起源と推察された。有機態のC:P比は100前後であるが、N:P比は16を15倍も上回りレッドフィールド比からみて窒素過剰になっている。春のブルームは沿岸の濁りを増大させ濁質は海底を這う下層密度流で深部に輸送される。時期的に淡水湖の珪藻沈降と類似で、海底の窪みに入ることを確認した。河口近傍のNa分布から満潮憩流時に側線を横切る低塩分帯を捉えた。軽量または溶存態元素群Li,B,Srは一様分布、懸濁態金属群Fe,Al,Mn,Znは浮遊砂と相似形を示す。また底質中のFe,Al,Mnはプリューム縁端に残留して河口流出流と対応をみせた。浅水波による底質移動について藻場の瞬間流速分布を実験的に検討した。高濁層は土砂以外の懸濁物として生物粒子、金属元素も含み、鉛直混合が活発な海域の特徴が示された。
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