研究概要 |
沈殿池は, 上水処理や下水処理における最も基本的な単位操作であるが, その挙動は複雑で相似率を合わせることができず模型実験は困難である. そのため, 設計や操作は経験的に行われている. 高価なパイロットプラント実験に替えて, 数値シミュレーションを導入すれば特性の把握が容易になる. 横流式沈殿池の流れを簡略化して, 2次元非圧縮性非定常流れとし, 単粒子沈降, 沈殿したスラッジの再浮上を無視, および一定水温とした. 数値解析法は, SMAC法で有限要素法を用い, 時間方向は台形法とした. 流入した濁質を含む水は急速に低下し, 密度流となって底部に沿って流れる. 沈降が良好な場合は沈降が終了した後, 流れは底部を離れて上昇し, 水面に沿った流れとなって末端から越流する. この流れによって, 流入部では水面近く, 末端では底部に死水域ができる. トレーサーをシミュレートすると, 流出のピークは設計滞留時間の10%で発現し, 強い短絡流となっているが沈殿は良好である. 沈降が悪い濁質では, 沈降がほぼ終了した流れが底部の密度流より離れて上向流となり, 水面で水平方向に変わって流出部に向かう. トレーサーのピークは約50%になる. 密度流は滞留時間を短くするので沈殿効率を低下させると考えられていた. しかし、濁質を含む密度流は底部を流れるので, 粒子の沈降する距離が短くなるため, 沈殿に支障が出なかった. 流入部の下部または上部の狭い範囲から流入させると, 密度流は強くなり厚さが小さくなる. シミュレーションによれば沈殿効率が大幅に改善でき, 経験的に行われていた事実と合致し, 数値解析の有効性が確認できた.
|