研究概要 |
材料強度や荷重のばらつきを考慮した場合,建築骨組のシステム信頼度は1つの構造性能であり,システム信頼性を目標にした設計は性能型設計の一種とみなすことができる.システム信頼性を目標にした設計法では,システム信頼度の評価方法,個別破壊モードの生成方法,モード信頼性付与の方法などが解決すべき問題である.本研究では,使用限界状態と終局限界状態に対する剛接骨組の最小重量信頼性設計法を開発し,両限界状態に対するシステム信頼性指標や個別モード信頼性指標の相互関連性など,限界状態設計法に関する設計資料の提示を目的とした.本研究の成果および残された課題は以下のように要約される. 1.使用限界と終局限界に対する限界状態関数を定式化した.この関数値によって構造物の状態が判断できる. 2.個別破壊モードの破壊確率からシステム信頼度を評価する方法として,2次までの統計量を用いた簡便な逐次近似評価法を提案した. 3.破壊確率の大きな破壊モードを効率的に探索する手法として,遺伝的アルゴリズムの一種であるスキーマ貪欲法を反復利用する方法を提案した. 4.上記の信頼度評価方法の応用として,システム信頼性を目標にした最小重量設計の方法論を提示し,実際規模の構造物の解析が実用的な計算量で可能となった.また設計結果の考察を行ったが,システム信頼度と個別モード信頼度の関係について十分な検討を加えるに至らなかった.この点は今後検討すべき課題である. 本研究の成果は,必ずしも前述した研究目標を十分達成していない.しかし,システム信頼度の簡便な評価法と,遺伝的アルゴリズムを用いた塑性崩壊に対する卓越破壊モードの生成・探索法の開発は,特筆すべき成果である.
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