研究概要 |
本研究では,ひび割れが生じていない鉄筋コンクリート(RC)はりとひび割れが生じたRCはりの中性化促進を行った後に腐食促進試験を行い,中性化深さ,ひび割れの有無,かぶり厚さ,水セメント比の鉄筋腐食への影響を調べた。 試験体は,長さ450mmの鉄筋コンクリートはり中央に露出区間38mmのφ14mmの磨き丸鋼(アノード)と,長さ150mm,φ14mmステンレス棒(SUS304)2本(カソード)とを埋設したものである。なお,載荷した状態で腐食試験に先だって中性化促進を行った。中性化による中性化深さはかぶり厚さの1/2とかぶり厚さ(鉄筋表面まで) 目標にした。その他の要因と水準は、水セメント比(40,50,70%)、鉄筋のかぶり厚さ(10,20mm)及びひび割れの有無である。ひび割れ幅は鉄筋位置側面で0.1mm程度である。中性化促進は,温度20℃,湿度60%,CO2濃度10%の条件で行った。腐食促進試験は65±3℃のNaCl3.2%の海水相当塩水中に24時間浸漬し,24時間自然放置乾燥するサイクルを1サイクルとする浸漬乾燥試験を行った。測定項目は,アノード想定の丸鋼とカソード想定のステンレス棒との間を流れる腐食電流と,引張縁中央部における電気化学的特性値である。試験終了後には丸鋼をとり出し腐食状況を調べ,アノードの腐食面積,腐食重量減少量を測定した。得られた結果は次の通りである。(1)ひび割れがある試験体はひび割れ位置を中心として引張側に激しい腐食が発生している。(2)中性化が完全に進行した試験体では全面にわたって腐食が生じる。(3)ひび割れ試験体の腐食速度は,中性化域の場合,未中性化域のそれに対して1.5〜2.5倍程度大きくなる。(4)ひび割れ試験体の腐食速度は未中性化域の場合,ひび割れのない試験体に対して2倍程度,鉄筋位置まで中性化すると1.2倍程度に大きく,完全に中性化した場合はひび割れの有無は関係しなくなった。
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