研究概要 |
近年風力による振動が励起されやすい建築構造物が増加する傾向にあり,実務設計における耐風設計の重要性が増している.現在のところ弾塑性構造物の風応答については不明な点が多いため,耐風設計で想定する最大級の風速に対し骨組が弾性的に挙動する範囲に納まるように設計されている.しかし,外力の不確定性を考慮すれば,確立は小さいとはいえ構造物は設計風速を超える風速を受ける可能性があり,構造物の終局耐力を検討する上で風に対する弾塑性応答性状を知る必要がある.また,風による弾塑性応答特性が明らかになれば,弾塑性応答を考慮した終局強度型の耐風設計の可能性も考えられる.風力による応答では,弾塑性応答時には構造物の見かけの固有周期が長くなることにより入力エネルギーが増加する.この点では構造物の塑性化は不利といえるが,一方弾塑性応答時には骨組は塑性仕事によりエネルギーを吸収するので,塑性化の程度を制限することにより,安定な応答性状が得られると考えられる.本研究は,オンライン風応答実験をおこない,鋼構造物の弾塑性応答特性を明らかにすることを目的としている.本研究で得られた結論は以下のようにまとめられる.(1)風方向応答では平均風力の存在により塑性変形は片側に累積する.風直角方向応答では塑性変形は両側に生じ.(2)実験の応答結果は本研究で用いた部材レベルの応答解析法による解析結果とよく一致する.(3)風方向応答は,塑性勾配を適切に定めれば,Bi-linear型復元力特性モデルを用いた解析で応答を予測することが出来る.(4)風直角方向応答は,Bi-linear型復元力特性モデルを用いた解析で応答を予測することが出来ない.
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