研究概要 |
立体トラスや立体フレームのような空間構造物は,さまざまな種類の部材が組み合わされ,かつその部材数は膨大である。超音波試験やアコースティックエミッションのような非破壊試験法はローカルな損傷検出には有効ではあるが,全体システムの損傷検出となると部材を一つ一つ検査しなくてはならず,多大な手間とコストを費やすことになる。このような場合,空間構造物の振動を計測し,損傷の発生を検知し,損傷の位置を特定し,損傷度を評価するシステム同定手法を用いた逆解析が効率的かつ経済的であると考えられる。本研究は,システム同定手法による立体トラスと立体フレームの損傷検出技術の構築を目標に平成10年度から12年度までの3年間継続して行われた。 空間構造物の損傷検出における問題点の源は,部材レベルとシステムレベルの距離が大きいことにある。従来の非破壊試験法がローカルな損傷評価には有効ではあるもののグローバルな損傷評価には限界があるのと同様,システム同定手法は逆にグローバルな損傷評価には有効ではあるもののローカルな損傷評価には限界がある。したがって,両者を融合した損傷検出技術を構築するには,システム同定手法の観点からどの程度までならローカルな損傷検出が可能なのかを明らかにしておくことが必要になる。本研究では,グローバル損傷からローカル損傷への流れの中に中間段階を設け両損傷評価を繋ぐことを考えた。立体トラスでは,全体システムから損傷領域を絞り込み,その損傷領域内で損傷部材の検出を行った。立体フレームでは,上下方向に損傷層を探索した後,損傷層内で水平方向に損傷部材を探索した。また,損傷検出の精度と信頼度を向上させるために,下部加振による全体振動のみでなく,立体トラスではインパクトハンマーによる打撃加振,立体フレームでは小型加振機による正弦波加振を行い,局部振動あるいは高次モードを励起する方法を導入した。 3年間の研究はシミュレーションベースおよび模型実験ベースで行われたが,実建物への損傷検出技術の適用への道筋は示せたと考えている。
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