木造建物の多い我が国では地震災害の中でも地震火災による市街地延焼火災がもたらす被害のウェイトが大きい。ところが都市は年々変化するため防災計画立案などに必須となる市街地構造データベースの構築・維持更新には膨大な時間と費用が必要である。本研究は衛星リモートセンシング技術を用いて高分解能の市街地木造率を簡易・安価・高精度に推定する手法を開発し、防災計画立案に資すること等を目的とするものである。ここで木造率とは単位面積あたりの木造建物水平投影面積の割合とした。本研究の木造率推定手法は木造建物が他の建物と熱容量が小さく表面温度の経時変化パターンが他の建物構造と異なることに着目したものである。昼夜の2時期観測を行うランドサットTMのデータを用いて表面温度の変化パターンを捉え、地表面の熱容量分布推定図を作成し、市街地内建物群の表面温度変化パターン特性を比較検討することにより木造率を求めるというものである。解析対象とした神戸市において昼夜の表面温度指標の差から木造率の推定を行ったところ、自治体が実地調査などにより整備していた町丁目別市街地構造統計値との比較では全体に比較的良い推定精度が得られた。しかし植生の割合が大きい地区では表面温度変化を実際より小さく見積もってしまう問題や、工場などに見られる熱容量の小さな構造耐火鉄骨造建物を木造と誤判別する例なども見られた。またリモートセンシングの解析では行政の町丁目別市街地構造統計値よりもきめ細かい情報が得られた。町丁目別市街地構造統計値などを用いた調査ではこれまで平均化などの統計処理の中で見落とされてしまうような小さな危険地域の発見などにも役に立つものと期待される。
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