研究概要 |
本研究は,最近の高気密住宅における換気・通風性状の把握を目的に,1)トレーサーガス実験による各室の換気性状の評価法,2)通風性状の評価法,及び3)設置された換気システムに及ぼす気密性能や外界条件の影響の解明を目的としたものである。まず,第1の目的に対して,実大モデル住宅における基礎実験を実施し,トレーサーガスの放出法をパルス法とし,放出間隔を30分程度に設定すると精度の高い各室定常濃度の推定及び各室間換気量の評価が可能なことを明らかにした。この結果を受けて,超高層集合住宅の一住戸を対象に開発手法を適用し,数種類の汚染質発生モードに対応した各室定常濃度分布の推定,空間換気量の評価を行い,このような評価が現場にて迅速に可能であることを確認した。第2の目的である窓開放時の通風性状の評価に当たっては,中層集合住宅における実測を行い,トレーサーガスを開口部にて放出した場合,風下側の室内濃度及び風下側開口部における濃度は概ね均一になることを見出したが,室濃度の時間変化は各室一様混合とした場合の微分方程式の解との対応が十分でなく,トレーサーガスの放出法や,室内空気の攪拌などについて一層の検討が必要であることが分かった。この点について一部風洞模型実験と現場における圧力測定結果を併用する試みを一部開始した。最後の換気システムと外界条件,気密性能との関連については,首都圏の超高層集合住宅を対象として多数の実測調査を実施し,超高層住宅のドア部分の気密性状が建物によって大きく異なり,これが建物全体の気密性能そのものに重大な影響を与えること,またドアの隙間相当面積が換気設備による室内各部の換気性状に重大な影響を与え得ることが判明した。この結果に基づき、センターコア型の住宅に関し,風洞実験結果,気象データ,気密性能に関する調査資料を統合して検討する手法を開発した。
|