研究概要 |
本研究では,生命進化過程を模して建築形態の最適化をはかることを試みている。具体的には,ホランドにより考案された遺伝的アルゴリズムをもとに,与えられた評価関数の値を最大化する建築形態を効率よく求める手法を開発することに第一義的な目的としている。さらに,こうした手法を用いて新たな建築形態を発見すること,および評価値のい優れた建築形態に共通な特徴の中から新たなデザイン原理を探すことも目的としている。 本研究は,大きく以下の3つの部分から構成されている。 1.建築形態最適化手法の整備 遺伝的アルゴリズムでは,交叉の結果,表現形が意味をなさない遺伝コードとなってしまうことがあり,それを除去するために計算効率が悪くなる。そこで,建築形態の特徴に則した遺伝子表現方法を探した。さらに,建築形態の評価計算は計算負荷が大きいので,進化計算途中で簡略評価関数をニューラルネットワークで学習してゆく方法を開発した。 2.建築・都市形態の最適化とデザイン原理の探索 建築における室割り当ての最適化,中廊下型最適平面の作成,集合住宅の日照条件最適化形態の探索,都市における施設配置の最適化問題について,上記手法を適用し,目的関数の値の高い建築・都市形態の最適解を求めるこを行った。さらに,この最適解に共通した特徴を抽出し,設計ノウハウや建築・都市のデザイン原理を探した。 3.新たな建築・都市形態の創生メカニズムの検討 建築・都市形態の最適化アルゴリズムによる最適化計算の結果から読み取れる建築・都市のデザイン原理をもとに,伝統的なデザインにはない新たな建築・都市形態を創生する原理的メカニズムがあり得ることを示した。
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