研究概要 |
本研究は,地理情報システムを基盤として,環境に配慮した都市開発のための環境管理支援システムの開発を試み,急激な都市化に伴う環境問題の深刻な開発途上国の都市へのシステム適用の可能性と課題を明らかにしたものである。以下に得られた成果をまとめる。 1.日本の複数自治体の環境管理計画から整理した知識ベースと,人工衛星データなど途上国の都市でも入手可能なデータにより推論が可能な,環境ゾーニングマップ作成支援エキスパートシステムを構築し,まず日本と韓国の都市に適用して推論結果の妥当性を確認した。次いでこれを途上国の都市に適用して,提案したシステムの有用性と今後の改良の方向を示した。 2.途上国の都市の市街地拡大変化の定量的予測のためのセルラーオートマタモデルを構築し,まず日本の都市への適用から,ほぼ現状を再現できることを確認した。次いで途上国の都市への適用を試み,ほぼ妥当な結果を得た。また同時に途上国特有の市街地形成要因などをモデルに組み込む必要性などの課題も指摘できた。 3.上記のエキスパートシステムと市街化予測モデルを地理情報システムと統合することで,意志決定者の環境に対する価値判断をゾーニング結果に反映でき,また将来人口フレーム,新規開発密度,市街地拡大パターンに影響を及ぼすパラメータの設定で,様々な開発条件に基づく市街地拡大のシミュレーションを可能にした。さらに,これらのゾーニングマップと市街地拡大予測結果を重ね合わせることで,環境保全や公害災害発生防止の立場からみた,都市開発の適性評価を支援するツールを提案した。最後に,インドネシア・マカッサル市への適用を通して,システムの有用性を示すとともに,当市の環境に配慮した都市開発のための具体的提言を示した。
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