| 研究概要 |
本研究の目的は、Ce^<3+>配位多面体結晶場の低次元・低対称性と光学スペクトルとの相関を明らかにし、その知見に基づき、近紫外域(340-420nm)での新規な発光材料を作成、波長可変レーザー発振の可能性を探ることである。本研究では、低対称性結晶場をもつ酸化物メリライト型結晶A_2B_3O_7(A=Ca,Y ; B=AI,Si)、フッ化物結晶BaMgF_4,CaYNaYF_6にCe^<3+>を添加した結晶を育成し、配位多面体の結晶場対称、歪みによるCe^<3+>の励起状態のエネルギー分裂、分光特性及び結晶欠陥構造を調べ、以下の知見、成果を得た。
1.フッ化物及び酸化物中のCe^<3+>配位多面体結晶場の低対称性と強さの励起状態のエネルギー準位、光学スペクトルヘの影響を明らかにした。Ce^<3+>の励起状態のエネルギー準位の重心は、配位多面体サイズによる平均結晶場の強さに比例、分裂幅は配位多面体の低対称歪みに比例するという知見を得た。
2.2種のメリライトCa_2Al_2SiO_7,CaYAl_3O_7にCe^<3+>を添加した結晶は近紫外〜可視(380-460nm)で不均広がりによる幅広い発光を示すこと及び励起波長がNd : YAGレーザーの第3高調波(355nm)に一致することを見い出した。フッ化物BaMgF_4にCe^<3+>を添加した結晶は、近紫外(270-400nm)の発光を持ち、それが規則位置のCe^<3+>と電荷補償体或いは欠陥の摂動を受けたCe^<3+>の二つの光学中心によることを明らかにした。その励起波長はNd : YAGレーザーの第4高調波(266nm)に一致することを見い出した。これらBaMgF_4 : Ce^<3+>,Ca_2Al_2SiO_7 : Ce^<3+>は、新しい全固体波長可変紫外レーザー材料となり得る事を示した。
3.新しい光機能として、2種のメリライトCa_2Al_2SiO_7,CaYAl_3O_7にCe^<3+>を添加した結晶で、UV光あるいは近赤外フェムト秒レーザ照射により紫〜青色の長残光を発現することを見い出し、そのメカニズムを熱誘起の電子-正孔再結合モデルで説明した。これらは新しい光機能材料への展開が期待される。
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