研究概要 |
強誘電体メモリー素子に用いるチタン酸鉛薄膜やチタン酸バリウム,ストロンチウムの疲労,劣化リークは,薄膜中あるいは電極界面に存在する金属欠陥,酸素欠陥や種々の電荷とラップ(イオン化されていない欠陥)等が原因であることが知られている.本研究は,TSC法によって検出した相転移や誘電緩和ピークとこれらの欠陥との関係を,明らかにすることを目的としている. あらかじめ分極処理をしたチタン酸バリウム,ストロンチウムは相転移に伴い自発分極が変化して外部に電荷を放出する.特に強誘電相から常誘電相に転移する温度に於いて相転移による誘電緩和ピークの他に新たな緩和ピークが存在することがわかった.この緩和ピークは,結晶中の電荷トラップによるもので,強誘電体から常誘電体への相転移に伴って出現する事が明らかとなった. また,膜の抵抗率が比較的小さくリークしやすいチタン酸鉛薄膜の,熱処理効果について検討した.熱処理により最大分極(Pm)は減少し,膜の抵抗率が1.2×108Ωcmから3.0×108Ωcmへとわずかに増加した.また,P-E曲線は電界に対して非対称であった.熱処理前の薄膜にはTSCピーク温度(Tm)が74℃と130℃にあり,それぞれのピークのトラップ準位は0.45eVと0.52eVであった.しかし,熱処理後の試料にはこれらのピークは認められなかった.これらのTSCピークは電荷トラップによるものと考えられることから,熱処理により電荷トラップが消滅して,膜のリーク特性が改善された.
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