研究概要 |
研究代表者等は,次世代の高性能ディスプレイとして期待されている電界放射型ディスプレイ(FED)用超微粒子高性能蛍光体の開発に関する研究を行っている。本研究では微粒子合成に適していると言われているゾルーゲル法によりSrTiO_3:Pr,Al,Y_2O_2S:Eu,SnO_2:Eu,TiO_2:Eu,Y_<2-x>Zn_xO_3:Eu等の蛍光体の合成を行った。 SrTiO_3:Pr蛍光体は赤色発光を示すが,高輝度を得るためにはAlを添加する必要がある。Al添加量30mol%が最適で,励起電圧2kV,電流密度108μA/cm^2の励起で34cd/m^2の輝度,CIE色度座標(0.681,0.314)を得ている。Al添加効果の機構については,走査型電子顕微鏡観察及び核磁気共鳴測定により,添加したAlの大半がAl_2O_3として蛍光体粒子表面に分布し,発光の取り出し効率を低下させていること,SrTiO_3母体に導入された一部のALは4配位の構造をとることによって輝度向上に寄与していることを初めて明らかにした。 一方,Y_2O_2S:Eu等については,粒径.5μm以下の微粒子の合成に成功し,Y_2O_2S:Euでは1kV,60μA/cm^2の励起で320cd/m^2の輝度,CIE色度座標(0.648,0.342)を得ており,これは市販の蛍光体と比べて1桁程度微粒子化されているとともに,高輝度化もはかられている。SnO_2:Eu蛍光体の合成では,SnCl_4及びEuCl_3の溶媒としてエタノールを用いることにより,水を溶媒とした場合より微粒子化,20倍以上の高輝度化がはかられることを見出した。Y_2O_3:Euに10mo;%のZnを添加することにより,結晶性及び輝度が著しく向上し,Euの添加量4mol%のとき,2kV,60mA.cm^2の励起で1000cd/m^2なる高輝度で,CIE色度座標(0.648,0.342)なる色純度の優れた赤色発光が得られ,実用化に向けて大いに期待できる状況にある。 以上,本研究により,数kV以下の低励起電圧で,高輝度且つ色純度の優れた微粒子蛍光体をゾルーゲル法により開発することに成功し,フルカラーFED実現への展望が得られた。
|