研究概要 |
本研究は,TiB_2等の遷移金属ボライドやLaCoO_3のようなペロブスカイト型酸化物などの高温電気電導率結晶を高温動作型熱電発電用電極材料として応用するための材料学的検討を行うことを目的とし,それらの薄膜の作製と電気伝導特性の評価をおこなった.得られた主要な結果は以下のとおりである. 1.TiB_2薄膜の作製と電気伝導特性 : 基板温度450℃,RF電力200W,Tiが約30%過剰のターゲットを使用したとき,ほぼ化学量論組成のTiB_2薄膜が合成された.キャリアの種類,密度の測定から,作製したTiB_2薄膜は金属的な電気伝導挙動を示し,室温での電気抵抗率は約160μΩcmであることがわかった.低効率の温度依存性に関しては,温度の上昇にともない電気抵抗がわずかに上昇するというバルク材とは異なる挙動を示した.その結果高温域ではバルク材に近い電気伝導度を持つことがわかった. 2.LaCoO_3薄膜の作製と電気伝導特性 : La_2O_3およびCoO混合圧粉体をターゲットとしてIBS法によりLaCoO_3薄膜を合成した.合成した膜に大気中で1143 K, 6時間の熱処理を加えることにより,最も結晶性の良いLaCoO_3セラミックス薄膜が得られた.室温におけるLaCoO_3薄膜の電気抵抗率は1.35x10^2Ωmであった.また測定したゼーベック係数は正の値をもちキャリアが正孔であることがわかった.さらに電気抵抗率の温度依存性を測定したところ,低温では半導体的な挙動を示したが,550 Kより高温域で金属-絶縁体転移を示唆するゆるやかな抵抗率の温度変化が観察され,バルク材と同様の温度依存性をもつことが明らかになった.また900Kでの10^<-5>Ωm台の抵抗率を示し,バルク材あるいは金属材料に匹敵する高い電気伝導度をもつことが明らかとなった.
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